逃げたがり王女~さらわれ囚われたと思ったら溺愛されてました!?~
黒髪に、触れれば切れそうな青く鋭い双眸
 
顔は整っているけど……
 
……この人……どこかで…?……
 
わからない、わからないけど…
 
………こわい…………
 
鋭い双眸にユリィは逃げ出したい衝動を抑えて男を見返す
 
男が口を開いた
 
「…ユリィ…ユリィ・ファラコット…」
 
「…なんで…私の名前…」
 
そこではっとする
 
「…失礼しました。養父のお知り合いの方ですね?申し訳ありませんが、養父は四年前に事故で他界してしまって…それで…あの…」
 
一向に口を開かず黙ったままの男に戸惑いを覚える
 
「申し訳ありませんが、そういった訳なので…今日はもう遅いですしお引き取りを…」
 
そこで言葉を切る
 
目の前の男は…口の端を持ち上げて冷たく微笑んでいた
 
「ユリィ・ファラコット。…いや…ユティーリア・オルブライト・ファライアンと呼ぶべきか…やっと…見つけた…」
 
さぁっと血の気が引くのを感じた
 
「え…………」
 
ごくりと息をのんで頭を必死に頭を働かせる
 

「…い、いいえ。わたしはユリィ・ファラコットです。どなたかとお間違いになられているのではないでしょうか?」

「これほど分かりやすい反応をしておいてそんな言葉でごまかせると思っているのか?ユティーリア。」
 
男が余裕の笑みでそうのたまう
 
「…失礼ですが、どちら様ですか。」
 
「…さすがに気づかないか。…俺はヴィンセント。ヴィンセント・カスタルディ・ベルダーだ。」
 
…ベルダー…ベルダーってまさか…
 
唇がわなわなと震えてくるのがわかる
 
ベルダー…ベルダー伯爵
 
今の当主の名前は…ヴィンセント
 
二十三才という若さにして伯爵家の当主になったがその才能はすでに国王も認めている程だという
 
このラファール王国で最も注目すべき人材
 
でも
 
わたしが一番関わってはいけない相手
 
「迎えにきた。一緒に来てもらおう。」
 
ヴィンセントが近づいてくる
 
後ずさった地面が、ざっと音をたてる
 
わたしと家の間にヴィンセントがいるから家に逃げ込むことはできない
 
ならば……
 
わたしは即座に踵を返して来た道をかけはじめた
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