逃げたがり王女~さらわれ囚われたと思ったら溺愛されてました!?~
いつの間にか太陽はほとんど沈み、街から離れたここは木々の影によって闇のなかだ
 
慣れた道を懸命に走る
 
のに
 
「…っきゃっ…」
 
木の根につまづいて転んでしまう
 
ヴィンセントが近づいてくる気配がする
 
…はやく…はやく逃げなきゃ……
 
痛みに涙が滲む
 
立ち上がってまた走り出す
 
けど
 
ただでさえ不利なこの状況で足にけがをしたとあっては逃げ切れることなどできるわけがなく
 
「…っあっ…!?……」
 
腕を捕まれる
 
振り切ろうともがくけど木に背中を押し付けられてうまく動くことができない
 
ふいに引き寄せられて完全に捕まってしまった
 
ヴィンセントの腕の中に閉じ込められる
 
「…っいやっ……はなしっ……」
 
「逃げるほどの理由があるのか?ユティーリア。」
 
なおも抵抗するわたしの手首をおさえ、耳元でヴィンセントが低い笑みを籠らせながら囁いた
 
背中にゾクリとした感覚がはしる
 
「…っそれ…は……」

はたと抵抗の手を止める
 
ヴィンセントがどこまで知っているかわからない今、うかつに話すわけにはいかない
 
押し黙ったわたしにまたもヴィンセントが囁いた
 
「沈黙か。賢い子だ。」
 
「…はな……して……」
 
「離したら逃げるんだろう?」
 
「…お願いします…はなしてください…」
 
ふっと腕がゆるんだと思ったら後ろの木にからだを押し付けられる
 
そのまま両脇にヴィンセントの腕がつかれ、逃げ道を塞がれる
 
しばらくの沈黙
 
ヴィンセントの視線がいたい
 
きっと睨むとヴィンセントが目を細めた
 
「なるほど…嗜虐心をそそられる顔だ…」
 
< 4 / 14 >

この作品をシェア

pagetop