逃げたがり王女~さらわれ囚われたと思ったら溺愛されてました!?~
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
 
…………だれ…………?……
 
真っ暗な意識のなかで
 
からだがうごかない…のに………
 
………リア…………ユティーリア…………
 
あなたは……
 
なつかしい
 
わたしを呼ぶ声
 
優しく切ない響き
 
わたしは…………
 
目をゆっくり開く
 
薄ぼんやりとした意識の中で
 
ふかふかの寝台にまくら
 
それに
 
目の前に………あお……………
 
え?
 
目の前にヴィンセントがいる
 
「おはよう。ユティーリア。」
 
ここは……
 
はっとして体を起こし、続いて体を起こしたヴィンセントを突き飛ばすようにして距離をとる
 
「なんで…………」
 
ふと手足に違和感を感じ、見ると
 
「…な…にこれ……」
 
シャラン、と軽やかな音をたてたそれは
 
金に色とりどりの細かな宝石や鈴がちりばめられ、ともすれば可憐な腕輪にしか見えないそれは…鎖の端をしっかりと寝台に取り付けられた手枷だった
 
足首には手枷と色違いの銀の足枷
 
「なに…これ……なんで…こんな…」
 
「なんでって決まってるじゃないか。」
 
ヴィンセントがシャラシャラと指先で鎖を弄ぶ
 
「お前が逃げないためだ…ユティーリア。」
 
「意味がわからない…わたしを家に帰して!あなたなんか知らないもの!なのに…なんでこんな…」
 
「残念ながら、お前の家はもうない。それに俺のことも知ってるはずだ。」
 
「どういうこと。わたしの家はもうないってまさか…」
 
「そのままの意味だよ。ユティーリア。いや…ファライアン王国のユティーリア第一王女、といった方が正しいな。」
 
「……ひどい……なんでそんなこと……」
 
そこでヴィンセントの言葉にはっとする
 
「…っちがうわ!わたしはユリィ。ユリィ・ファラコットよ。ユティーリアなんかじゃない。」
 
「気づいてないのか?さっきから俺はお前のことをユティーリアと呼んでいたんだが。」
 
「あ……」
 
やはりヴィンセント相手に隠しきれる訳はなかったのだ
 
「詰めが甘いな。まぁいい。ここがお前の家になることにかわりはないからな。」
 
「……どうして?王国が滅びてからわたしはもう王女じゃない。ただのユリィよ。今さらどうしようっていうの?」
 
「今さらどうする、か。そうだな、今言えるのは一つだけだ。ユティーリア。君にはこのベルダー家の伯爵夫人になってもらう。」
 
伯爵……夫人……?
 
…それってつまり……
 
「い…いやよ!絶対にいや!誰があなたなんかとっ…きゃっ」
 
くるりと体が反転して気づいたらヴィンセントに寝台の上に組み敷かれていた
 
< 8 / 14 >

この作品をシェア

pagetop