クールなサイボーグ部長の素顔
社食に行くと、珍しく同期の美咲と出くわした。

「あら、千波久しぶりね」
「ほんと、久しぶりだね、美咲。同じ社内にいるのに、フロアが違うと全然会わないね」

同期の大口美咲は秘書課勤務だ。
なので重役の執務室のあるフロアに秘書室もあるのでなかなか社内で会うことはない。
しかし、しょっちゅう愚痴を言い合うために飲みに行く仲なので、かなり仲が良い。
彼女は所謂カワイイ系の容姿をしているが、その中身は毒舌サバサバ系女子。
つまり、似たもの同士である。
私は毒舌ではないにしろ同じくサバサバ系である。

お互いに社員証をかざして食券機で券を買う。
社食は社員証をかざすだけでご飯が食べられ、料金はリーズナブルな上に給与から天引きされる仕組みだ。
財布を持たずにご飯が食べられるとなかなか好評。

さすが、総合商社。
新しいものは続々試して売りに行かせる。
そういう感じの柔軟性のある企業だ。

美咲とお互いに今日のオススメレディース定食を頼み、トレーを持って窓際の二人がけの席に着いた。

「さて、先週彼氏に振られたってやさぐれまくったと噂の千波さんよ?その首筋のは何かな?ん?言ってみ?」

まさかの追求に驚くとともに、私はそこのキスマークに気づかなかったなんて、間抜けすぎる。
指摘されて、頭を抱えると

「送別会の日、木島部長が送ってたとか、聞いたわよ?あのサイボーグに送ってもらったなんて凄いわね」

そう言うと、ニヤニヤした顔をして

「つまり、これの犯人って…」

「黙秘権を行使します!!」

そう言うと、もぐもぐとご飯を食べて会話をストップさせた。

< 21 / 72 >

この作品をシェア

pagetop