クールなサイボーグ部長の素顔
その発言をしながら、山野辺さんの目線は私の後ろに向いている。
振り返りたくない、非常に振り返りたくない。

「山野辺さん、捕獲してくれてありがとうございます」
「可愛い後輩のお願いだからねぇ、頑張んなさい」

そう言うと、山野辺さんはサラっと手を振って戻って行った。
置いてかないでください!!
そして私も可愛い後輩ですよねぇ?
そうだと言って!

「千波、流石に置き手紙だけで帰られるのは傷つくんだが?」

さっきまで山野辺さんが座ってたところに座るのは木島部長。

「部長、お忙しいですよね?私もまだまだ自分の仕事がありますので、戻ります」
「まぁ、待て。今日は何が食べたい?」

はい?あぁ、食べに行こうって話の事か。

「今日は和食がいいです」

ブスっと答える私は確実に可愛くない。
だと言うのに、木島さんはそんな私を前にしても変わらずに居て

「そうか、和食だな。仕事十八時までには終わらせられるか?」
「今日は急ぎも無いので終わります」

「しっかりした話はその時にな。無理するなよ?」

そう言うと先に戻っていく木島さん。
私の前だと無表情は無くなるのか。
仕事の話じゃないから?
どっちにしても私に見せるのは優しくて甘い彼だ。

ギャップがあり過ぎて慣れない。
だから、ドキドキするんだと、自分の早まる鼓動にそう言い訳のように、思うことにした。
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