クールなサイボーグ部長の素顔
助手席ドアを開けてくれるので、私もそれに合わせてササっと乗り込んだ。

ドアが閉まると、すぐに移動して部長が運転席に乗り込んでくる。

「シートベルトしたな?」
「はい」
「それじゃあ、行くか」

そうして滑らかに動き出した車は、まだ早い時間の都内の道を進んでいく。
会社から出て十五分ほどで着いたのは、見た感じ普通の一軒家。
しかし、よくよく見ると小さな看板に和食処なごみと記されていた。
住宅街の中にある隠れ家的なお店のようだ。

車を降りて、入口に向かう。

「いらっしゃいませ」

柔らかで落ち着きのある声に出迎えられる。

「ま、急に来るって言うから何事かと思えば!いい子を連れてくるならそう言っといてちょうだいな!」

そんな声を部長にかけているのは、還暦前後の落ち着いた和服の似合う綺麗な女性。

「言っても良かったが、あまりの歓迎ぶりだと千波がびっくりするからな。普通でいいから」

答える部長もなんだか、あまり肩肘貼ってないし、身内にような感じだ。
私の不思議そうに見つめる視線に気づいたようで、部長は紹介してくれた。

「母方の叔母で八重子さん。ここは叔母夫婦のお店なんだ」

・・・・・・・・・、ん?
あれこれの返事も保留というか、逃げてる私を身内の前に連れてきたの?!

驚きすぎて声にならないまま、口をぱくぱくさせると

「ほら、言ってなくてもこれなんだから、大歓迎で迎えたらもっと大変だったよ」
< 28 / 72 >

この作品をシェア

pagetop