Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「お嫁にいけば働く必要もないのに、医大に六年も通うのは時間の無駄だ、と。医大を出れば二十四になります。それでは、良い嫁ぎ先を選べない、と両親は言うのです。今どき古い考えだとは思うのですが、それを両親が信じているのなら仕方ありません。でも、私は……」

「まだ、あきらめられないんだ」
 華月は、何かを堪えるように息をはいた

「何度も、話はしてはみましたが……こういうのを、価値観の違い、というのでしょうね。お父様とお母様が、私のためを思って言ってくれているのはわかるんです。本気で私の幸せを願ってくれていることも。でも……私にも、夢があったんです。それをわかってもらえなかったのが、少しだけ……寂しい、です」

「なんで、産婦人科なの?」
 華月は、顔をあげて少しだけ微笑んだ。
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