Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「人が新しく生命を生み出すということ。その瞬間に立ちあうというのは、ものすごく幸せなことだと思いませんか?」
「産婦人科は、医療現場の中でも比較的訴訟の多い科だ」
淡々と言った俺を、華月は、じ、と下から見上げてきた。驚いている顔じゃない。知っていたのか。
「無事に生まれる命の陰で、生まれない命だって少なくない。十ヶ月近く母体に問題なく妊娠を継続させることは非常に難しいし、出産時にトラブルを起こす例だってごまんとある。子供が生まれる、ということは世間では当たり前に思われているけれど、母子ともに健康で出産を終えるなんて、俺は本当に奇跡だと思っている」
「そうですね。きっと、現実は甘くないと思います」
そう言う華月の瞳は、今日見た中で一番、力強い。
「すべての命を救おうなんて、傲慢な考えなのかもしれません。それでも、医療を学んで知識を身につけて、その結果、この手で守れる命がたった一つでもあったなら、私はその選択を後悔しないでしょう。私一人の手など、取るに足らない力かもしれませんがそれでも、私は、その力を手に入れたかったんです」
その笑顔には、ゆるぎない信念があった。それを見て俺は、華月が今でも、それを単なる夢で終わらせる気がないんだと気づく。
……ちょっと本気で驚いた。いや、感心した、かな。ただの世間知らずのお嬢様かと思ってたのに。
「叶うよ」
「え?」
「産婦人科は、医療現場の中でも比較的訴訟の多い科だ」
淡々と言った俺を、華月は、じ、と下から見上げてきた。驚いている顔じゃない。知っていたのか。
「無事に生まれる命の陰で、生まれない命だって少なくない。十ヶ月近く母体に問題なく妊娠を継続させることは非常に難しいし、出産時にトラブルを起こす例だってごまんとある。子供が生まれる、ということは世間では当たり前に思われているけれど、母子ともに健康で出産を終えるなんて、俺は本当に奇跡だと思っている」
「そうですね。きっと、現実は甘くないと思います」
そう言う華月の瞳は、今日見た中で一番、力強い。
「すべての命を救おうなんて、傲慢な考えなのかもしれません。それでも、医療を学んで知識を身につけて、その結果、この手で守れる命がたった一つでもあったなら、私はその選択を後悔しないでしょう。私一人の手など、取るに足らない力かもしれませんがそれでも、私は、その力を手に入れたかったんです」
その笑顔には、ゆるぎない信念があった。それを見て俺は、華月が今でも、それを単なる夢で終わらせる気がないんだと気づく。
……ちょっと本気で驚いた。いや、感心した、かな。ただの世間知らずのお嬢様かと思ってたのに。
「叶うよ」
「え?」