Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「その彼女が幸せなのは、『デート』をしたからじゃない。『好きな人と一緒』だったから、どこへ行っても何をしても幸せなんだ」

 俺を見る華月の目が丸くなった。

「なるほどなあ。基本的な区別がついていなかったのか。だとしたら、華月は、デートをしたかったんじゃない。……恋を、したかったんだ」
「恋……」
「したこと、ある?」
 小首を傾げて考えていた華月は、ゆっくりと首を横に振った。

「ないと思います。静香さんのように、誰かのことを話すときにあれほど幸せそうなお顔になるような方は、私にはおりません。……でした。……ああ、そうなんですね。静香さんは、恋をしてらっしゃったんですね」
「華月だって、婚約者に恋をしてデートするようになったら、きっとそんな顔ができるよ」
「でも、相手の方は大人の男性です。デートしたいなんて言ったら、子供っぽいとお笑いになるかもしれません。それに……」
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