Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
 小暮が戻ってくる時には、おそらく見合い相手も一緒だろう。顔を見てから言ったのでは、気分を悪くするに違いない。
 言うなら、今しかない。

「岡崎様」 

 座布団をいざって降りると、華月はその場に指をついて頭を下げた。

「申し訳ありません。私、結婚はできません」

「「華月?!」」
 突然の華月の言葉に、両親の悲鳴があがった。

「あなた、何を急に……すみません、岡崎様」
「いや、構わないですよ。華月さん、この結婚は不満だったのかな?」
 驚いた顔はしたものの、岡崎は静かに華月に声をかけた。

「とんでもございません。ただ、私……私には、想う方がおります」
 華月は、頭をさげたまま震える声で言った。

「このまま黙って岡崎様に嫁ぐことも考えました。そうすれば、父の銀行も安泰ですし、今日のお話を聞いて、私が一度はあきらめた望みの進路を選ぶことができることもわかりました。けれど……どうしても、あの方の面影を私の中で消すことができないのです」

「華月、何をバカなことを! こんなに良い条件の縁談なんて、二度とないぞ」
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