Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
☆
「いい天気だなあ」
のんきに空を見上げながら歩く圭介の後ろを、華月は少し遅れてついていく。
和風に美しく整えられた中庭には、二人の他には誰もいない。うらうらと暖かな日差しが降り注いでいる穏やかな春の日だった。
「私の事、知ってらしたんですか」
これ以上ないくらいのふくれっ面で、華月は聞いた。
再会の衝撃が過ぎてしまえば、心に浮かんできたのは疑問と憤りだ。
部屋に入ってきても、圭介は驚きもしなかった。そこに自分がいることを知っていたのだ。
前を歩いていた圭介が、先ほどと変わらない笑顔で振り向く。けれど、夕べの圭介の仕打ちを考えれば、その笑顔が爽やかであればあるほど、華月にとっては胡散臭いことこの上ない。
「ホテルの前であったのは、本当に偶然。華月という名前と、今日お見合いだって話を聞いた時には、俺自身もまさかと思ったよ」
「でしたら、なんで黙っていらしたのですか」
「はっきりと確かめたわけじゃないし。……というのは建前で、君という人間を知りたかったから、かな。婚約者という立場を知ってしまえば、性格の変わる女も世の中いるからね」
「……今日、ここで会って驚く私の顔を見てみたかったから、ではなくて、ですか?」
その質問を、圭介は笑顔で黙殺した。疑問を確信に変えてさらに頬をふくらませた華月に、圭介は楽しそうに笑う。
「いい天気だなあ」
のんきに空を見上げながら歩く圭介の後ろを、華月は少し遅れてついていく。
和風に美しく整えられた中庭には、二人の他には誰もいない。うらうらと暖かな日差しが降り注いでいる穏やかな春の日だった。
「私の事、知ってらしたんですか」
これ以上ないくらいのふくれっ面で、華月は聞いた。
再会の衝撃が過ぎてしまえば、心に浮かんできたのは疑問と憤りだ。
部屋に入ってきても、圭介は驚きもしなかった。そこに自分がいることを知っていたのだ。
前を歩いていた圭介が、先ほどと変わらない笑顔で振り向く。けれど、夕べの圭介の仕打ちを考えれば、その笑顔が爽やかであればあるほど、華月にとっては胡散臭いことこの上ない。
「ホテルの前であったのは、本当に偶然。華月という名前と、今日お見合いだって話を聞いた時には、俺自身もまさかと思ったよ」
「でしたら、なんで黙っていらしたのですか」
「はっきりと確かめたわけじゃないし。……というのは建前で、君という人間を知りたかったから、かな。婚約者という立場を知ってしまえば、性格の変わる女も世の中いるからね」
「……今日、ここで会って驚く私の顔を見てみたかったから、ではなくて、ですか?」
その質問を、圭介は笑顔で黙殺した。疑問を確信に変えてさらに頬をふくらませた華月に、圭介は楽しそうに笑う。