Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「だいたい君だって、俺のこと気づかなかったじゃない。せめて見合い写真くらい見なかったの?」
「それは……ケイさんもです」
「ま、お互いさま、だよな」

 もちろん、華月のもとにも見合いの写真と釣り書きくらいはきていた。けれど、それを見てしまったら、もう本当に夢が終わってしまうような気がして、華月はなんとなく開くことができなかったのだ。

「ふくれっ面も可愛いね。でも、そろそろ笑ってよ。夜の華月も綺麗だったけど、君にはきっと、太陽の光の方がよく似合う」
「知りません。私、怒っているんですのよ」
 ぷい、と華月は圭介に背を向ける。

 二度と、会えないと思った。忘れろと言われて、想い続けることすらも許されないのかと涙が止まらなかった。
 圭介が一言言ってくれれば、華月はそんな思いをする必要もなかったのだ。再会することも自分の気持ちもすべて知っていて、圭介は黙ったまま華月に背を向けた。これが怒らずにいられようか。

 怒りは収まらないが、再び会えたことは純粋に、嬉しい。
 怒っていいのか笑っていいのか、華月自身もどんな表情をしていいのか決めることができない。結果、自分でも変な顔をしているだろうと思うと、圭介の顔が見られない。
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