Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
 かなわない。

 圭介の中にいるその人は、その心に深く入り込んで侵食していて……会ったばかりの自分が入る隙などないのかもしれない。

 昨日その話を初めて聞いた時には覚えなかった痛みを、華月は痛切に胸に感じていた。
 その痛みの名前を、華月はもう知っている。

「そんな女には、もう二度と会えないと思っていた。だから、結婚にも何も望まなかったし、その相手にも期待なんてしていなかった。……昨日までは」

 顔をあげた華月は、近づいてくる圭介と目を合わせた。
「夕べは、楽しかったよ。なんて素直な子なんだと感動したのも束の間、君の無防備なまでの素直さは、凶器のように俺の繊細な心をずたずたにしてくれた」
「だから、最後にあんな意地悪したんですの?」
「おや、ばれた」
「ばれた、じゃありませんわ。想いを告げることすらも拒絶された私が、どれほど悲しかったか……」
 圭介は、柳眉を逆立てる華月に自嘲する。
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