Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「そうだな。君の気持ちに気づいていながら、俺はわざと君を泣かせた。……俺は、君に甘えたんだ」
 予想外の言葉に、華月は目を丸くする。

「ケイさんが……ですか?」
「もう一度、君に会えることはわかっていた。わかっていて、突き放して、泣かせて……それでもきっと、君は俺を許してくれるだろうと思ったんだ。ひどい男だろう?」
「最低ですわ。……でも」
「ん?」

「ケイさんは私に、許すこと、を期待してくださったのですね」
 何も期待しないはずの、親の決めた婚約者に。

 澄んだ瞳で真正面から圭介を見あげて、華月は言った。その様子に一瞬目を丸くした圭介は、少しだけ顔を歪めると、ふいに片手で華月の両目を覆った。

「え? ケイさ」
「このまま聞いて」
 大きな手で作られた暗闇の中で、華月はおとなしくその言葉に従う。
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