Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「……本当に、君の素直さは凶器だな」
「え?」
「いや、こっちの話。……俺はさ、うちが病院だったし一人っ子だったから、子供のころから当然のように医師になるものだと思われてきた。両親は別に頑固でも意地悪でもないけど、同じ医師となって病院を継ぐことが、俺の一番の幸せだと信じていたんだ」
 ぴくり、と圭介の手の中で華月が反応した。

「どこかで聞いたような話だろう? ま、俺にとっても、それは最初、当然の将来だった。他になりたいものもなかったし、親の働く姿を見ながら漠然と、自分もいずれはこうなるんだと思っていた。けれど」
 圭介は、小さくため息をつく。

「……けれど、中学の頃かな、そんな立場に疑問を抱くようになった。自分で選んだのでもない未来を歩くことに反発したくなって、でもその未来を手放すこともできなくて……無性に、自分のことを苛立たしく思う時期があったんだ。やけになった、って言葉が正しいのかわからないけど、親の前や学校で優等生をしているその裏で、危ない遊びにばかり手を出した。そんなことで、自己主張をしているつもりになっていたんだ。いわゆる反抗期ってやつだろうし俺も大概子供だったと今なら思えるけど……ホント、バカだった」

「ケイさん……」
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