Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「俺と、結婚してください」
「…………はい」
「返答までに、微妙に間があったけど」
「なんとなく、くやしくて」
 複雑な顔で言った華月に、圭介は楽しそうに笑ってその手を差し出した。

「では、お姫様のご機嫌をとりに出かけるとしようか」
「今度は、昼間の街ですか?」
「それもいいけど」
 圭介は、華月の細い指をとってその薬指をなぞった。

「朝になっても消えない指輪、買いにいこう。もう華月が泣かないように」
 月の光ではなく、陽の光でできた指輪を。

 圭介は香月の指に自分の指に絡めると、連絡しなきゃなあ、と言いながら反対の手でスマホを取り出して歩き出す。
 
 つないだ指のぬくもりに、華月はふいに実感した。

 ここに、ある。二度と、手に入らないと思っていたものが。
< 68 / 70 >

この作品をシェア

pagetop