最後の男(ひと)
「ちなみに俺は、家事は一通りできるよ。とは言っても、洗濯物の畳み方に拘りがあるとか、お掃除グッズに思い入れがあるとかそういったものはない。あ、Yシャツだけは、クリーニングに出すけどな」

「私も学生時代から一人暮らしなので、家事はできているつもりです。勿論、忙しい時はおざなりにはなりますけど、大体週末にまとめてやっちゃう方です」

「一香は謙虚なんだな。女って、もっと得意料理だとか、家庭的なとこアピールしてくるものなんじゃないの?」

「だって先輩、うちの営業の忙しさ分かってますよね。帰宅して寝るだけみたいな時期だって結構あるのに、貴重な睡眠時間を削ってまで、毎朝栄養バランス整ったお弁当作ったり、長い髪にブローの時間を掛けたり、ネイルに気合を入れたり、私にはできないです」

仮にも、結婚前提という話で進もうとしている相手を目の前にして、自分でもよく躊躇うことなく本当のことを言えたものだと思う。きっと普通の女子は、先輩が言うようにもっと取り繕ったりするのだろう。ありのままの私を受け入れてほしいなんておこがましいことは思わないけれど、私にはできない。

「謙虚っていうより、正直なのか。確かに一香の言う通りだよな。男も女もない職場で働いていて、家事も完璧なんていったら超人だよ。ごめん、単に話の流れで、試したわけじゃないから悪く思うなよ」

もし私を試すつもりで話したのだとしても、先輩のことを悪くは思わない。
男なら誰だって、結婚相手には、身の回りの世話をしてほしいとか、料理上手が良いと思っているはずだから。

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