最後の男(ひと)
何度も唇を重ねながら縺れ込むようにして寝室のベッドにたどり着いた時には、お互いの着衣はすっかり乱れ、荒い呼吸の音だけが室内を占めていた。

「だめ! 電気つけないで」

先輩がキスをしながらベッドサイドに手を伸ばすと、ナイトランプが仄暗く室内を映し出した。
すっかり逆上せていた頭が急に冷静になって、半ば先輩を押しのけるようにしてランプに触れれば、消えるはずの照明は一段明るくなって私を混乱させる。

「えぇっ?! なんで??」

「……残念だったなぁ、一香。それ、三段式だから、もう一回触れるとさらに明るくなるぞ」

一瞬先輩の存在を忘れて狼狽えると、いつもよりワントーン低くした先輩の声が降ってきて恐る恐る見上げれば、今までに見たことがないほど不敵な笑みを湛えて私を見下ろしている。

「今更どうしたんだよ」

「今更って言わないでください。私、うっかりしてました。やっぱり今日はホテル帰ってもいいですか」

「何だよ、あの日か?」

「違いますよ! 先輩って、もっとムードとかそういうの大切にしてくれる人だと思ってたから、その時が来たらシャワー浴びる時間くらいあると思ったんです」

「今、そういうムードだっただろ」

「分かってます。私がうっかりしてたんです。だから、一緒にホテル来てくれるなら、続きしてもいいですよ」

「……話が見えてこないけど、お預けではなく、ホテルならいいってことか?」

「ホテルならっていうか……。勝負下着、スーツケースの中なんです!!」

はだけた胸元を隠して横を向けば、数瞬のあと、先輩が思わずといった様子で噴き出す。

「ぷはっ! 勝負下着って……っ!!」

先輩は言いながら、目にもとまらぬ速さで私の両手首を一括りにして頭上で纏めると、遠慮もなしにブラウスの裾を持ち上げて胸元を露わにする。

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