ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「私がこんな風にくっ付くと、お嫁さんが白い目で見てくるんだもん」

ギュ~ッと腕に力を込めて抱き付いてくる広海君。

そりゃそうだ。

こんなカワイイ妹がギュッと胸を押しつぶすほど体をくっつけてたら、お嫁さんだって気になって仕方ないって。

気持ちは子供のままでも、体はすっかり大人なんだし。

「ねえセンセ、一つお願い聞いてくれる?」

と僕の肩の上で首を傾げる広海君。

「ん、ああ、何?」

「今から付き合って欲しいの」

エッ?付き合ってって?

「ちょっと買い物に行きたいの。ね、いいでしょ」

なんだ買い物か。

それはいいけど、でも、

「今から?」

まだ定時まで1時間以上もあるんだけど。

「いいじゃない。どうせ教授もいないんだし、黙ってればわからないって、ね」

って、堂々と教職員をサボリに誘うなよ。

「だけどさ、」

渋ろうとした途端、広海君が首に絡めた腕に力を込めて僕を体ごと左右に揺さ振ってきた。

「ねぇいいじゃないセンセー、ねぇねぇ」

オイオイ首が絞まるって。

マッタク、言い出したら聞かないんだからな。

「わかった、わかったよ」

頷くとようやく腕を解いてくれた。

「ヤッタ♪先生大好きっ。早く行きましょ」

途端に笑顔を見せた広海君に引っ張られて、買い物に付き合わされる事になる。

買い物が彼女の気分転換なんだろうな。
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