熟恋ージュクコイー
プレゼントを渡したら、戸惑っている様子だったけど、とにかく開けてもらった。
真野さんにもらってほしいから。

箱を開けると

『可愛い…』

良かった。可愛いって言ってくれた。

そのままネックレスを付けてあげることにした。

髪の毛を横に流す姿、きれいなうなじ。

ここで俺は…

後ろから抱きしめてしまった。

後ろから、なんて、ずるいよな、俺。

でも嫌がらずにいてくれた事が、俺の暴走を助長する。

俺の手に、そっと手を重ねてくれる。

でも…身体が少し強張っていることに気づいた。

怖がらせたかな…

「ありがとうございました。」

と言い、離れた。

離したくないけど。

リラックスできる関係では、まだないか…

正面から見た真野さんに、ネックレスはよく似合っていた。

恥ずかしそうに笑う彼女は、本当に素敵だった。

お店を出た後、駅まで少し歩いた。

なんとなく、手を握ると、嫌がらずに、握り返してくれた。

それだけで、俺の胸がいっぱいになる。

もう少し飲みませんか、と誘ってみたが、断られた。
そりゃそうだ、大きいとはいえ、お子さんがいる。

母親が遅くまで知らない男と飲んでたら心配するだろう。


駅でタクシーを捕まえて、真野さんを送る。

あぁ、もう帰るのか…

すると、真野さんがお礼を言い始めた。

そんなのいいのに。

俺が一緒にお祝いしたかった、それだけなのに。

ぉぁ。帰りたくない。

そうも言えない状況は、さすがにわかっている。

この誕生日を、忘れてほしくない。

そう思った俺は

『真野さん?』

と呼びかけた。

「はい?」

と耳を傾けて言う真野さんの耳元で、

『さくらさん、おやすみなさい」

とささやいた。

顔が真っ赤になる。

俺も彼女も。

このまま帰したくない気持ちを押し殺し、タクシーを降りる真野さんと別れた。

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