次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

身なりを整え騎士団の制服に身を包んでいるからか、凛々しさと頼もしさが増し、そして何より生き生きとして見えるセドマと顔を見合わせて、リリアも言葉を返す。


「お父さんこそ」


ほのぼのと話し出した親子の横で、アレフは遠巻きにこちらを見つめている騎士団員たちへと「休憩!」と指示を飛ばす。

と同時に、視線を城の方へと向けて、くんくんと匂いを嗅ぎ始めた。


「なんだかとっても甘い匂いが漂って来ていますね」


オルキスの後ろにいるマルセロも同じように匂いを嗅ぐと、すぐに納得がいったかのように「あぁ」と呟いた。


「今夜のために、料理長が腕を振るっているのでしょう」


マルセロの言葉を聞いて、今度はアレフが「あぁ」と声を発し、そしてリリアへと俊敏に身体を向ける。


「そうでした。今宵は宴が開かれる予定でしたね。リリアさんの警護は我々ふたりで就かせていただきますので、ご承知おきを!」

「はっ、はい! よろしくお願いいたします!」


思わぬ言葉にアレフだけでなくセドマにまで頭を下げながらも、リリアは胸の中に不安が広がっていくのを感じていた。

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