次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
今夜開かれる宴はごく親しい者たちしか呼んでいないから気楽にと、リリアは前もってオルキスから言われているのだが、その客人が楽しみにしているのはオルキスと自分だということもリリアは分かっているため、とてもじゃないが気楽に構えてなどいられなかった。
勉強の傍ら、ダンスのステップも練習中だったのだが、なかなか上手くいかないと落ち込んでいるところに今夜の話を聞かされたため、ダンスのパートナーとなるオルキスの足を引っ張ってしまう予感にやはり不安は募るばかりである。
「最初よりは上達しているし、俺がしっかりフォローする」
「……でも」
「出来なくても別に構わない。だからそんなに気に病むな」
騎士団の詰所から離れて、ふたりはそんな話をしながらのんびり中庭を歩いていく。
「すぐにバルコニーに連れ出す。だからちょっとの我慢だ」
「ありがとう」
申し訳なさそうに笑ってみせたリリアの手を掴み取ると、オルキスは歩幅を同じにして一歩一歩進んでいく。
「オルキス様は舞踏会が始まってもいつの間にか姿を消してしまいますからね。きっと今宵もすぐにリリア様は連れ去らわれてしまうことでしょう」