次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

マルセロの呟きに、ばつの悪そうな顔をしたオルキスを見上げてリリアはふふっと笑い声をこぼした。

きっと上手くできなかったとしても、そんな自分をオルキスはまるごと受け止めてくれる。

そんな風に自然に思えたことにリリアが幸せを感じていると、突然、傍らに生い茂る低木が不自然にガサガサと揺れた。

驚いたリリアがオルキスにしがみつくと同時に、そこから黒い布の塊が這い出てきた。

小さな悲鳴を上げたリリアとは反対に、オルキスは少しも驚くことなく、リリアの身体を片手で支えながら、呆れたようにそれを見おろす。


「ボンダナ。なぜそんなところから出て来る」


オルキスの言う通り、ゆらりと顔を上げ、きょとんとした表情を浮かべたのはボンダナだった。


「なんだお前らか。驚かせるな」

「それはこっちの台詞だ」


オルキスの突っ込みを無視し、ボンダナはその場で胡坐をかいた。


「花を探しててな」

「花?」

「確かに植えたはずなのだが、それがこの庭のどこだったかがあやふやになってしまってな。今、しらみつぶしに探しているところだ」


よいしょと、ボンダナが茂みから引きずり出した小さな籠を見て、オルキスは察したように「あぁ」と呟く。


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