次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「薬にでもつかうのか」
「それは今必要としておらん……だが、ちょっと気になってな」
リリアはボンダナの前に置かれた籠を覗き込んだ。その中にはリリアでも知っている草花だけでなく、見知らぬ赤い花も入っていた。
「善にも悪にも使える代物ゆえ、姿だけでも確認すれば安心できるかと思い探しておるのだが、こういう時に限ってなかなか見つからん」
「……そうか。俺も覚えておこう」
オルキスの瞳に微かな緊張感が宿る。それを見てリリアはドキリとし、ボンダナはほんの少しだけ安堵する。
「まぁいい。今日のところは可愛らしい花と美しい花、両方見られたから良しとしておこう」
ボンダナは立ち上がり背伸びをしながら、籠を覗き込んでいるリリアに声をかけた。
「珍しいかい?」
「はい、とっても!」
「わたしはね、未来を予言したり、まじないばかりして生きているわけじゃない。普段は、いろいろと手をかけて特別に育て上げた植物の根や茎から抽出した液をつかって薬を作って売ったり、あげたりしている」
再びリリアの傍らへとボンダナはしゃがみこみ、籠の中から草花をいくつか掴み上げながら、穏やかに言葉を紡いでいく。