惚れ薬
「うん、ありがとう」


初美は嬉しそうにそう言い、スマホを握りしめて横断歩道を渡って行く。


「初美って元々田中君のことが好きだったのかな」


3人で歩きながら真弥がそう言って来た。


「どうなんだろうね? あれだけ大切にされてたら揺らいでもおかしくないけどね」


あたしは初美から見せてもらったメッセージを思い出してそう言った。


女子2人に囲まれて歩いている遼太郎は会話には入って来ない。


自分は大人しくしておいた方がいいと思っているのかもしれない。


それでも遼太郎の表情は満足そうに見えた。


こうして歩いているだけでいいなんて、さっきまでの遼太郎では考えられないことだった。


カフェの前まで来てあたしは立ち止まった。
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