惚れ薬
「どうしたの? 入らないの?」


「ごめん遼太郎。あたし真弥と2人で話がしたいから、お金だけ出して」


あたしはわざとそう言って右手を差し出した。


真弥が驚いている。


しかし遼太郎は笑顔のまま「わかった」と頷き、あたしの手に5千円札を一枚のせて来たのだ。


「じゃ、楽しんで」


遼太郎は気分を悪くした様子もなく、笑顔で手を振って歩いて行く。


その姿を見送ったあと、あたしは真弥と視線を合わせた。


「すごい効果だね」


カフェに入り、予定通りパフェを注文してから真弥がそう言った。


「そうだね。さすがに怒ると思ってたけど、全然怒らないんだね」
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