愛は、つらぬく主義につき。
 お父さんもおじいちゃんも、あたしに組を継がせるつもりは無かったんだろうと思う。だから跡目を継ぐ為の教育もされずに、自由に育った。
 家業を理解できるようになった年頃には、将来の夢は『お嫁さんになる』で、『姐さん』じゃなかった。

 遊佐は遊佐で『お嬢を守れ』って大人達に刷り込まれて、子供の頃からあたしの騎士だったから。もうその流れで、からかわれてもクラスが違っても、始終あたし達は一緒。変わったのは呼び方ぐらい。それまでは『マコト』って下の名前でね。

 思春期ってやっぱアオイんだよねぇ、周りの女子が『遊佐クン』て、アイドルみたいにもてはやすモンだから。無性に腹立って、その子達の前でわざと呼び捨てにしたら、引っ込みつかずにずっとそうなっちゃった。
 
 中学二年のあたしの誕生日に初チュウして。成人式の翌朝、二人で朝帰りした。
 正直、お父さんやおばあちゃん達に何を言われるかって、あたしは怖気づいてたのに。遊佐は繋いだ手を離しもしないで『ただ今、戻りました』って飄々と。惚れ直したなんてもんじゃなかったな。



 もし。あの事故がなければ。
 今頃あたしは遊佐の奥さんで。いずれ哲っちゃんの跡目を継いで、遊佐が一ツ橋本家の頂点に立つのを陰で支える女になってたろうと思う。

 それを。別の誰かを、言うに事欠いて仁兄をあたしに当てつけて、臼井の血を継げだなんて。遊佐をまるで、もう役に立たない部品みたいになおざりにするなんて。


 
 あたしは。利益主義のアンタ達の思う通りになんて絶対にならない。
 たとえ。
 家を棄てることになったって。あたしは遊佐を諦めたりしない。

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