愛は、つらぬく主義につき。
 沈みこんでくあたしに伸ばされた力強い腕。
 ずっと女同士だって思ってたのに。いざって時のユキちゃんは大人の男だった。
 暗い海底が足許に遠ざかって、あたしはおずおずと顔を上げる。
 薄闇に閉ざされた先に。待つのが何だとしても。

 どうせなら貫いてから、散れ。

 
 開き直りだったかも知れない。自棄(やけ)も半分。
 でも。ユキちゃんに掬ってもらったココロは、鉛に熱が通ったみたいに。その分少しだけ重さが消えた。気もした。 

「・・・・・・そう・・・だよねぇ」

 ゆるゆると長く息を吐いた。

「あたしも後悔したくない・・・」

 独り言のような呟きに、にっこりと微笑みが返る。

「思い切って行きなさい。大丈夫、骨はしっかり拾ってあげるから」

「うん・・・ありがと。任せるね」

「任されたわ」

 オネエ言葉に戻ったユキちゃんは悪戯っぽく言い、片目を瞑った。
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