愛は、つらぬく主義につき。
お嬢さん達は毎晩九時にはベッドに入る決まりだと聴き、声を遠慮しつつ、やっぱり相澤さんと知り合った馴れ初めは気になって訊いてしまった。

彼女は全くの堅気であたしとは違うけど、でも。立場の違う二人が一緒に居られてる、そのことにどうしても引かれた。

「・・・(わたる)さんが生きる世界をわたしは何も知らないから。藤君にもよく、向いてないから代理の女を辞めろって言われました」

懐かしそうに織江さんは口許をほころばせる。あたしよりたった四つ上で、藤さんも同い年。やっぱり榊を思い出してものすごく親近感が沸いてた。

「つまづきそうになるたび藤君が手を貸してくれて。今もそうですけど、藤君がいなかったらわたしは渉さんの傍にいられなかった」

それはあたしも。榊がいてくれなかったらあたしと遊佐はダメになってた。胸がきゅっと切なくなった。

愛おしむように目を伏せた織江さんは静かにカップを置く。

「渉さんは立場のある人ですから、それなりの危険もつき纏いますし。わたしのことなんかよりもって思うんですけど、いつも守ってもらうばかりで・・・、自分に何もできないのがもどかしくなるんです」

眼差しが一瞬陰って見え、こっちを向いた時にはそれは消えてた。

「宮子さんが組を継ぐんですか?」

素直に問われ首を横に振る。

「一人娘なんですけど、継ぐのは考えてなかったので、今の若頭が次期組長になります」 

「そうですか。わたしの知り合いにも、お兄さんが跡を継ぐので結婚も仕事も自由で、楽しそうな女性がいます」

控えめな彼女の無垢な笑顔が少し目に染みる。

「宮子さんは結婚を考えたりは・・・?」

あたしは自嘲気味に笑うしかなかった。

「・・・結婚したい男に、他の男としろって言われちゃいました」
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