毒舌社長は甘い秘密を隠す
「さっき、九条不動産に行ってきたんです」
「うん。九条さん、相変わらず素敵だった?」
「はい、今日も完璧でした。うちの社長と違って穏やかだし、言葉遣いまで丁寧で」
「わかる。取引先の中でも八神さんと九条さんは格が違う感じがするもの」
そんな話をしながらも、九条さんの素敵な佇まいより、仏頂面で微笑み皆無の井浦社長の顔ばかりが浮かぶ。
逆だったら、今頃ドキドキして楽しいランチタイムだったのになぁ。
「九条さんが、私をランチに誘ってくださったんです。もちろん社交辞令だって分かってましたよ? だけど、社長が割り込んできて勝手に断っちゃったんです。それも、すごく冷たい感じで」
「へぇ……」
「いくら仲がいいからって、感じ悪かったと思うんです」
「そっか」
失礼だって同調してくれると思ったのに、留美さんは思案顔だ。