毒舌社長は甘い秘密を隠す

「専務秘書の席が空くけど、どうだ?」
「えっ……あの」

 突然の話に戸惑う。


「現任は、海外のグループ企業で社長秘書になる。それは君の耳にも近々入るだろう」
「社長、私は今のままがいいです」

 昼間、九条不動産で話したことが動いているとは思わなかった。
 それに、私はひと言も今のポジションに不満をもらしたことはない。

 彼の秘書になって二年ほど。
 やっぱり、私には重荷だと判断されたのだろうか。そもそも秘書に異動したのは、彼の辞令があったからなのに。


「理由は?」

 ハイバックチェアに大きくもたれ、私を射抜く鋭い視線にたじろぐ。


「理由なく俺の元にいたいなんて思っていないだろ?」
「それは、その……二年前、せっかく機会をいただいたので、まだまだ頑張りたいんです。社長の隣でこの会社が大きくなっていくのを見たいと思っています」

 それから、社長のことが好きだから。
 厳しいし、口も悪いけれど、それでも彼の働く姿はとても素敵だ。

 社長秘書じゃなくなったら、また体調を崩した時に駆けつけることもないだろう。後任の誰かにあんなきゅんとする姿を見せてほしくない。

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