毒舌社長は甘い秘密を隠す

《九条です。今日はありがとうございました》
「こちらこそ、資料までご用意くださって、ありがとうございました」

 九条さんからの連絡に、忙しなかった胸の奥がホッとする。彼の声色は、聞くだけで相手を癒すように温かい。


《御社のゴールデンウィークは、いつからですか?》
「弊社は暦通りの営業となっております。今年は飛び石連休ですね」
《そうですね。旅行に行くにも計画が立てにくくて諦めました》

 きっと、同棲する予定の彼女と旅行に行こうとしていたのだろう。九条さんも日頃忙しくしているはずだし、連休はゆっくりとどこかに行きたかったんだろうな。


《沢村さんは、どこかにお出かけされるんですか?》
「いえ、連休の都内はどこも混んでますし、ひとまずのんびりしてから考えるつもりです」

 なんて言ってみたものの、今日の夕方までに社長に突きつけられた条件を飲むかどうか、返事をしなくてはならないのだけど。
 そういえば、今日の夜から彼の自宅で暮らすように言っていたけれど、社長は連休中不在にするはずだ。旅行と視察で海外に出る予定で、私がホテルや飛行機を手配したから間違いない。

 彼の条件を飲むとしても、不在の間はどうするつもりなんだろう。

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