毒舌社長は甘い秘密を隠す

《では、私と出かけてもらえませんか?》
「ええっ!?」

 想像もしなかった話に、つい声が大きくなった。留美さんや他の秘書も一瞬だけ目を向けてきて、私は肩をすくめて小さく頭を下げる。


《いつでもいいので、一日だけ私に付き合ってほしいんです。今日行けなかったお食事でもどうかなと思いまして》
「あの、さすがにそれは」

 仕事中なら分かるけれど、プライベートで九条さんと会うなんて考えたこともない。
 しかも、今日のランチのお誘いは社交辞令かもしれないって思ってたのに……。


《井浦さんの監視の目があると食事すらできなそうなので、こうしてお願いしているのですが、いかがでしょう?》
「でも、どうして私を?」
《もっとお話してみたいなと思っていたんです。元秘書として》

 なるほど、そういうことか。
 九条さんも、永井ホールディングスで社長秘書をしていた人。お互い勝手は違うだろうけど、社長を支える者としての共通点を忘れていた。


「そういうことでしたら、是非よろしくお願いいたします」

 以前交換した名刺にある連絡先に変わりがないか確認し、追って連絡を取り合うことになった。

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