毒舌社長は甘い秘密を隠す

「私の我儘に付き合っていただいて申し訳ないのですが、沢村さんは深く考えないで過ごしていただけると助かります」
「そうなんですね。わかりました」

 九条さんのためなら、協力するしかない。
 素敵な部屋を彼女にサプライズしたいという、彼の心意気なのだから。


 最初に向かったのは、新宿区内にある高層マンションだった。
 他社が販売している物件だけど、勉強がてらいろいろ見れていい機会になった。
 物件の内装は、その建物のコンセプトに合わせてあるのが通常で、このマンションも黒と白を基調にしたシックな雰囲気が都会感やラグジュアリーさを強く感じさせるものだった。


「どうですか? 今の物件」

 マンションを出て、九条さんの車に乗り込む。毎回自然とエスコートしてくれるあたり、彼の紳士的な人柄がにじみ出ている。きっと彼女さんはもっと大切にされているんだろうな。

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