毒舌社長は甘い秘密を隠す

「沢村さんがどうってことではなくて、井浦さんのほうが沢村さんを気に入ってるんだろうなと思っているんですよ」
「まさか! 九条さんはご冗談がお好きなんですね」

 気に入られているどころか日頃冷たくされているし、我儘に振り回されてばかり。
 今日だってこれから彼の自宅で暮らし始めなくてはならないし、それだって断れない条件を突き付けられたからだ。

 ……そもそもは、私がアルパくんたちと添い寝するのを禁じたからだけど。


「井浦さんとこの前食事に行ったとき、沢村さんを褒めていましたよ。それに、ことあるごとに沢村さんの話が出てきたりして、きっと彼はあなたを意識しているんだろうなと思ったんです」
「えっ!? そんなことがあったんですか?」
「この前もランチにお誘いしただけで、すぐに割り込んできて断っていましたからね。だから、私の中では確信しているんです」

 そう言って、九条さんは穏やかに微笑む。だけど、いつになく策士の笑みにも見えた。
 男同士じゃないと分からないことなのかもしれないけれど、少なくとも社長に特別な感情を寄せられているとは思えないのに。

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