毒舌社長は甘い秘密を隠す

「こちらにお住まいでしたか! では、もし私が住むことになればご近所になりますね。それにしても、さすが井浦さんのところの物件です。他とは比べ物にならないほど設備もサービスも整っていました」
「九条さんのお気に召したようでしたらなによりです」

 会社で話しているのとなんら変わらないふたりのやりとりに挟まれ、私の視線が右に左に泳ぐ。
 少しずつ距離を詰めた彼らを見上げ、私は言葉を飲んで会話に入るきっかけを探した。
 だけど、すぐに社長が私をまっすぐに見つめて瞳に映す。


「沢村さんは、どうしてここに?」
「あ、あの……」
「一緒に部屋を見ていたんです。いろいろ意見を聞きたくて、新宿とこちらと見てきた帰りでして」

 私が口ごもっていると、九条さんが間に入ってくれた。
 九条さんの話を聞いてから、社長は私に視線を戻す。


「そうなんです。今日はお昼前から一緒に見て回っていて」

 以前、九条さんが部屋を探していることは伝えてあったから、すぐに社長も理解してくれたようだ。

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