毒舌社長は甘い秘密を隠す

「夕飯はどうする?」

 戻ってきた彼に言われて、ハッとした。慌ただしくて忘れていたけれど、時計を見れば十九時前だ。


「なにか作りましょうか?」
「それもいいけど、せっかくだからゆっくりしないか? なにかデリバリーしよう」
「はい」

 社長がそういうなら甘えさせてもらおう。


「フレンチ、イタリアン、中華、和食ならどれがいい?」
「イタリアンはお昼に食べたので、それ以外がいいです」

 イタリアンでもいいけど、ピザやパスタの気分ではない。
 彼は私の要望を聞くと、一瞬表情を曇らせてから「……じゃあ、和食な」と言ってコンシェルジュに繋がる子機を取って、ソファに座った。


「お世話になっております、井浦です。いつもの特選うな重を二人前用意していただけますか?」

 注文をした彼は長い脚を組み、大型テレビをつけた。

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