毒舌社長は甘い秘密を隠す
彼が日頃食べているらしい特選うな重は、驚くほど美味しかった。
出張先での仕事のことをひと通り聞きながら食事を済ませると、彼は先にシャワーを浴びてくると言ってリビングを出ていってしまった。
本当にマイペースな人だなぁ。普通、自宅に人を招いたら、もうちょっと話す時間を作ってくれたりするのに。
だけど、それは彼が私に気を使っていないからなのかもしれない。昼間、九条さんが言っていたことをふと思い出した。
彼がシャワーを浴びている間に、さっき聞いた話をタブレットのメモに残しておく。明日出社したら、資料に纏めて経営に役立てなくてはならない。
「明日……か」
明日の前に、今夜を越えなくてはいけない。
本当に一緒に眠る気なのかな。もし誘われたら、どうしよう。断ったらまた怒らせてしまうだろうか。
でも、そんなことを言ってる場合じゃない。秘書としての立場を越えてはいけないのだから。
それが許されるのは、彼が私を好きになってくれた時だ。
そしてきっと、そんなことは起きないと思う。
今夜から少しくらいは頑張ってみようと思ったけれど、現実を見れば見るほど、それが無意味なことに感じられた。