毒舌社長は甘い秘密を隠す

「お風呂、お借りしました」

 洗面室を出てリビングに顔を出すと、社長がソファに座って新聞を読んでいた。
 後ろ姿だけど、すでにイケメンオーラが漂っていて、つい見惚れてしまう。


「ゆっくりできたか?」

 初めて見た黒縁眼鏡をかけた彼に、一瞬できゅんとさせられた。
 コンタクトを着けているとは聞いていたけど、そこまで視力が悪いわけではないとも言っていたから意外で……。


「は、はい。マイクロバブル、満喫してきました」
「あれって気持ちいいのか?」
「えっ? 社長は使ったことないんですか?」
「面倒だから、基本的にシャワーだけ。気が向いたら湯に浸かるけど、どうせなら温泉に行きたいしな」

 いやいやいや、もったいないです!
 温泉に行かなくても、十分足も伸ばせるし、打たせ湯とかジェットバスの機能まであったじゃないですか!


「あー、疲れたな。ちょっと早いけど寝る」
「はい。ごゆっくりお休みになってください」

 私のすっぴんを見ても、ルームウェア姿を見ても無反応。本当にアルパくんの代役のようだ。


「君がいないと眠れない」

 強引に私の手を引いて、彼はリビングから出て行く。
 長い廊下を歩く間も、寝室に入ってからも彼は私の手を離さなかった。

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