毒舌社長は甘い秘密を隠す
朝からドキドキさせられっぱなしだったから、出社までの間に表情を引き締めた。
なにも朝から抱きしめなくたっていいのに……。
本当、私の気持ちに気づかないんだから。
そういえば、枕を投げつけられた彼はもっと怒ると思っていたけど、真逆だったように思う。
意地悪だったり素っ気なかったりするけれど、会社にいない時の彼はとても優しい気がする。
自席に着くと、留美さんが先に来ているようでパソコンがすでに立ち上がっていた。
今日は八神さんが常務宛てで来社するから、張り切っているのかもしれないなぁ。失恋したと言っていたけれど、憧れていた人に会う日は気合いが入るだろう。
九時三十分が過ぎた頃、社長が出社してきた。
秘書室の前を通っても見向きもせず、まっすぐに社長室へ入っていくその背中を追って、私は席を立った。
「おはようございます」
「……なんか変だな」
「えっ、そうですか!?」
お洒落な社長に変だと言われると、ちょっとショックだ。
昨夜のうちに決めておいたコーディネートが、おかしかったのかと身なりを確かめる。