毒舌社長は甘い秘密を隠す
「あ、おはよう、沢村さん」
「おはようございます」
今日の留美さんは、淡いグリーンのシャツが季節にぴったりだ。紺色のプリーツスカートの裾を揺らしながら席に着くと、慌ただしくキーボードを打っている。
十一時からの経営会議は、親会社である井浦リアルエステートとの会議で、常務は出席しない。その間に八神さんが来社するから時間に余裕はあるのに、落ち着かない様子だ。
「なにかあったんですか?」
「そうなのよ。八神さんに頼まれていた資料がまだ出来上がってないって、営業担当からさっき聞かされて」
「えっ!!」
すぐにどんな資料なのかを教えてもらい、助け船を出してもらえるように連絡をすることにした。
デスクの電話から呼び出しているのは、エリアマネージャーになった同期の男子。彼は同期の中で最も早く昇進したし、方々に情報網や人脈がある。
彼なら、必要な資料のデータなどを持っていると思ったのだ。