毒舌社長は甘い秘密を隠す

《はい、下田です》
「秘書室の沢村です。いま少し話せますか?」

 事情を話すと、彼はすぐにデータを送ると言ってくれた。
 数分で対応してもらえて、留美さんにも共有し、資料作成の一部を手伝った。
 なんとか出来上がり、営業担当からのものと組み合わせて完成したと報告を受けたのが十時四十分。八神さんが来社するまでに間に合って、ホッと胸をなでおろした。
 その間も、自分の仕事を並行して進めていたから、特に大きな影響はない。


「社長、会議のお時間です」
「わかった」

 会議開始の十分前に、社長室に立ち寄って声をかけた。今日の会議には親会社の社長、つまり彼の父親も同席するので緊張している。


「面倒だなぁ。早く終わってくれるといいけど」

 三カ月に一度開かれるこの会議は、時間も長いとあって社長は嫌っている。


「そう言わずに、お願いしますね」

 一歩後ろを歩きながら、彼のぼやきに言葉を返すと、ちらりと睨まれてしまった。
 だけど、これも毎回のこと。彼の会議嫌いは今に始まったことではない。

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