毒舌社長は甘い秘密を隠す

 寝付けなくて、荷物から絵本を出した。
 幼い頃から大切にしているかわいらしい物語の一冊は、表紙に満天の星空が描かれていて気に入っている。

 夜、眠れずに星を眺めている女の子が、隣に住む幼馴染みの男の子とベランダでこっそり会うところから始まり、その男の子が女の子のために素敵な話をするのだ。
 実は、夜空の星がひとつずつつまんで食べられるという想像は、童心に帰って読むとホッとできる。


「……起きてたのか」

 絵本を開いたところで、ちょうど社長が帰ってきて寝室のドアが開いた。


「おかえりなさいませ」
「あぁ」

 踵を返し、リビングに戻っていく彼を追う。
 昨日見られたばかりのすっぴんの顔をまじまじと見られ、恥ずかしくなって目をそらした。


「なにかあったのか?」
「えっ?」
「泣いた後みたいな顔をしてるから」

 まさかと思って目尻をぬぐうと、少しだけ涙が指先に付いた。

< 171 / 349 >

この作品をシェア

pagetop