毒舌社長は甘い秘密を隠す

「あくびをしたからだと思います」
「あ、そう」

 ……本当のことなんて言えない。
 社長が他の誰かと結婚してしまうのが、心から嫌だなんて。


「疲れたから寝る。明日もあるしな」
「そうですね」
「シャワー浴びてくるけど、先に寝てていいからな」
「はい」

 すっかり眼が冴えてしまった。
 一日働いたはずなのに、朝と変わらない爽やかな彼を見たら、ドキドキしてしまって……。
 それに、私の小さな変化に気づいてくれるなんて思わなかった。
 相手のことをよく見ている彼らしいとは思ったけれど、気づかなくていいところには本当に目ざとかったりするのだ。


 なんだか喉が渇いて、常温水で潤した。
 ダイニングチェアにはバッグが置かれ、スーツの上着が背もたれにかけられている。彼と結婚したら、こんなふうに彼を出迎えるのだと想像しては、なんだか切なくなった。

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