毒舌社長は甘い秘密を隠す
窓際に並ぶテーブル席に案内され、留美さんと向かい合って座る。
都心から市街部まで抜ける景色は、東京タワーと高層ビル群のネオンがキラキラしていて、このお店はデート向きだと思った。
「ここには何度か来てるんだけど、一昨年の六月にきた時、すごいものを見ちゃって忘れられないのよ」
小声で話す留美さんに合わせて、私も声を潜める。
「なんですか?」
「知らない人たちだったんだけど、修羅場に遭遇したの。ひとりの女の子を巡って、ふたりの男が言い合いしてたんだけど、最終的に負けた男がワインをかけられてた。きっと酷い裏切りでもしたんだろうなぁ」
「……裏切りはダメですよね」
私も、過去にあまりいい思いはしていないから、その類の話は耳が痛い。
「でも、もうひとりの男の人はすごく素敵だった! たぶん助けてくれたんだと思うんだけど、タキシードを着た超絶美形でね、ブライダルモデルでもしてるのかなって思うくらいだったんだよ」
「留美さん、まさかその人に会うためにここへ?」
「違うよ。私が会いに来たのは宮城さん。まだ自分の気持ちに気づいたばかりだから、なんの進展もないんだけどね」
やっぱり、私の予想は当たっていた。でも、留美さんが幸せそうでなによりだと思った。