毒舌社長は甘い秘密を隠す
「好きですよ。仕事は完璧だし、あの見た目ですからね。でも、あくまでも社長への尊敬からくる好意しかありません。線引きした以上の想いはないです」
「……まだ自覚なしかぁ」
「まだ、じゃなくて、これからもです」
本当はとっくに恋をしているけれど、これは誰にも言うまいと自分の心に秘めることに決めた。
きっと失恋が決まっているだろうし、留美さんに話した後でそんなことになったら、余計な気を使わせてしまうだろう。
二十一時過ぎにお店を出て、宮城さんの爽やかスマイルに見送られ、ビルを出た。
「沢村さん、新橋まで歩くよね?」
「すみません。私、会社に忘れ物してきちゃったんで、先に行ってください」
「あ、そうなの? じゃあまた月曜に」
「はい。今日はありがとうございました」
駅直結のデッキを行く留美さんに手を振って、念のため姿が見えなくなるまで見送る。
当然、会社に戻る必要はなく、社長の家に帰るためのその場しのぎの理由を付けただけ。
ついでに社用携帯を見たら、何件か通知が届いている。すぐに確認すると、全て社長からの連絡だった。