毒舌社長は甘い秘密を隠す

【今夜は帰ってくるのか? 泊まりならドアチェーンをかけるけど】

 着信が三回、メールが一件。
 こんな熱帯夜に締め出されては困る。自宅に帰ってもいいけれど、三カ月もこの生活をしていたせいで、彼がいない夜が考えられなくなっていると気づかされた。

 デッキの下り階段を気を付けて歩きながら、すぐに折り返す。だけど、呼出音が続くばかり。十秒ほどすると留守番電話に切り替わってしまった。


 近隣はオフィス街ということもあって、たくさんの車が行き交っている。その中から空車の行燈を灯したタクシーに向かって手をあげて、なんとかつかまえた。

 その間も、社長に連絡を入れるものの通話は叶わず。念のため、【お疲れ様です。今、帰っているところなのでチェーンはかけないでください】とメールを返しておいた。


 新橋から晴海のマンションまでは車で十分ほどの距離なのに、金曜の夜だからか渋滞している。
 もし帰れなかったら、目黒の自宅に行くしかない。普段使いのスキンケア用品がないのがネックだけど。

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