毒舌社長は甘い秘密を隠す

「これから出かけるから支度して」
「客先ですか?」

 本当に真面目だなぁ。それとも、わざとそんなことを言ってるの?
 途端に秘書の顔になった彼女を見つめて、表情がどう変わるのかを確かめようと思った。


「俺と出かける約束しただろ? 昨日のこと、忘れたのか?」
「えっ!? あれって本当に私と」
「どこでも連れていってやるから、早くしろ」

 晴れ渡った夏空のような顔を見せられ、少し安心した。
 断られたらどうしようかと思ったけれど、俺の計画通りにいきそうだ。


 ブルーグリーンのサマーニットと黒のアンクル丈スラックスに着替え、洗面室で髪をスタイリングする。
 彼女はもうひとつの洗面室で身支度を整えているけれど、何分でも余裕で待てる。

 好きな女が、自分と出かけるために綺麗になろうとしてくれているんだから、こんなに嬉しいことはない。
 ずっと想い続けてきた彼女とデートできるだけで気分は上々だ。

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