毒舌社長は甘い秘密を隠す

「お待たせしました」

 リビングでコーヒーを飲んでいると、二十分ほど経った頃に彼女が入ってきた。
 黒のサマーニットはノースリーブで、しなやかな腕が見えるだけなのにドキッとする。膝下丈のスカートはふんわりとしていて、鮮やかすぎないブルーが爽やかだ。
 いつも通勤に使っているバッグではなく、籐とレザーでデザインされたかごバッグがなんともかわいらしい。


「……どこか変ですか?」

 なにも言わないでいたら、彼女の表情が少し曇ったように見える。


「悪くないと思うけど。もう出るから、忘れ物するなよ」
「はい」

 褒めるくらいすんなりできたらいいのに、好きすぎるあまり言葉にできなくてもどかしい。
 だけど、彼女が意外にも照れた顔をするから俺まで恥ずかしくなってきて、ソファから腰を上げてそそくさとリビングを出ようとした。


「社長、携帯忘れてます」
「あ、悪い。ありがと」

 デートするだけなのに、緊張がやまない。
 彼女から携帯を受け取り、車の鍵と財布を持って自宅を出た。

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