毒舌社長は甘い秘密を隠す
「やけに楽しそうだな」
「社長とこんなふうに過ごせるなんて思っていなかったので嬉しいんです」
「……そうか」
俺の方が、きっと何倍も楽しいし嬉しいよ。そうやって無邪気に笑ってくれるだけで十分だ。
できればその笑顔を俺だけに見せてくれたらいいのにって、欲が言葉になってしまいそうなほどに。
「どこか行きたいところはあるか?」
「どこでもいいんですか?」
「いいよ」
「東央百貨店に行きたいです。社内履きと外出用の靴を見たいと思っていたので」
隣を歩く彼女に頷いて答え、駐車場に戻って車に乗った。
「荷物、後ろに置くよ」
「ありがとうございます」
俺のために買ってくれたペンが入った袋を受け取って、身体をひねる。
必然的に近くなった彼女との距離は、毎夜抱きしめている時に比べたら離れているのに、妙にドキドキしてしまった。
「……な、なんですか?」
ほんのり頬を染めて、揺れる瞳に俺を映している彼女が愛しくて、キスをしたくなった。
でも、そんなことをしたら、君はきっと理由を欲しがるだろうな。
どうしてキスをしたのかって、問い詰めるに決まってる。
俺と君は、社長と秘書だから。
「いや、なんでもない。気にするな」
上手くやりすごせそうにないキスの後を予想して、俺は気持ちを抑えた。