毒舌社長は甘い秘密を隠す

「社長、このお店見てきますね」

 男性用の靴も扱っているシューズブランドの店舗で、彼女は商品を次々と手にしている。
 あとについて俺も店内へ入ると、すかさず彼女は俺を見上げた。


「あの、本当に他のお店を」
「いいよ。今日はつき合ってやる」

 なんて上から目線の言葉で間を取って、本心を隠す。
 俺の方が彼女に時間を空けてもらったようなものなのに、男のプライドなのか惚れた者の逃げ場なのか、つまらない距離を保ってしまった。

 この靴の方が似合うんじゃないの?とか、そっちもいいと思うとか、積極的に買い物に付き合えない不器用な自分が嫌になりそうだ。


 彼女が店員に気に入った靴を手渡すと、奥の方から箱に入った新しい商品が出された。
 カウンターで商品の確認を済ませた彼女は、店員に提示された額を払おうとしている。


「これでお願いします」

 すかさず俺は、財布からカードを出して店員に差し出して会計を済ませる。

 驚いている彼女は、すぐに困ったように眉尻を下げて見上げてきた。
 
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